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2020.11.19
組織のエンゲージメントを高める周年コミュニケーション
会社の未来をデザインする周年事業を成功へと導く
プロフェッショナル座談会
企業は成長をしていく過程において、様々な節目を迎えます。今後進むべき企業の方向性を定め、組織とそこに関わる人々との良好な関係作りをしていくためには、周年事業はまたとない機会です。今回はJCDで数多くの企業のコミュニケーション課題を長年にわたり解決してきた3人のプロフェッショナルが、周年事業を成功させるポイントを探っていきます。
周年事業の成功ポイントは、「目的」設定にあり
----それぞれの専門領域や、これまでの周年事業とのかかわりについて教えてください。
塩谷
インナー向けのコミュニケーションをメインに、主にイベントの企画・運営を得意としています。なかでも周年事業については、これまで数多くの案件を手がけてきました。今まで各社で関わった周年事業の年数を累計すると、約2,000年位!になります(笑)。企業が周年事業にかける想いは様々ですが、個々の課題を捉えた解決策を導く役割が周年事業にはあると思います。クライアントが期待する想いを実現すべく、周年事業の企画・運営に関わってきました。
伊藤
普段は組織開発・人材開発のコンサルタントをしています。私が企業の周年事業に関わる時は、この機会をきっかけに、企業理念の再構築やビジョンの再発信などを提案することが多いですね。経営者や社員と接する機会や、インナーブランディングの分野でお手伝いさせていただくことも多いです。
川杉
インナー・アウターに特化することなく、主にコミュニケーション全般の仕事を担当しています。常日頃から私は、コミュニケーションとはあくまでも手段であると考えています。まず目的を明確にして、それを伝える方法や伝え方、内容を最適化させて構築していくことが大切です。周年事業であれば、まずは「誰に、どのような内容を伝えるのか」。これを明確にすることが一番重要だと思っています。
----JCDとして、周年事業をどのようにとらえていますか?
塩谷
ひと口に周年事業といっても、その主体は企業や団体、学校など多岐にわたります。先ほどのお話にもありましたが、成功させるためには、まずゴール(目的)をしっかりと定め、それに至るための施策を考えていくことになります。周年事業というのは、ある意味"きっかけづくり"なのです。お客様が今まで取り組んできたことを継続していく、あるいは新しいことを始めるといった未来の進むべき方向性を意志決定した時、その方向性を発信する場として機能するんですね。そこでは社員やユーザーといった様々な受け手側にも期待感を抱かせるチャンスであると思います。
伊藤
周年は、誕生日という言い方がわかりやすいでしょうか。創立や設立から月日を経ていくなかで節目を迎える。そのタイミングは、今の姿を再確認し、今後どうあるべきかを見つめ直して社内外へ発表する、そのまたとない機会です。しかしながら、組織を変えるのは非常に難しい取り組みです。ですから周年は、組織変革を促す上での大義名分として活用もできます。ただ周年だからといってお祝いをするだけでなく、組織の未来のあり方を宣言する場としても機能するのです。社員も巻き込み自主的な参加を促すことで、組織も自分たちも幸せになれるような気持ちをもっていただけるように取り組んでいます。
川杉
周年をきっかけにして今後の「ミッション・ビジョン・バリュー」を決定し、実行していくのはとても大切なことです。一方でコミュニケーションを考えるならば、先ほど誕生日というお話がありましたが、従業員と企業、その両者のエンゲージメントがあって初めて周年事業もハッピーな場として成立します。周年を企業目線でみると、どうしても祝われる側である企業を中心に考えがちになってしまいます。しかしながら目線をむけるのは、祝う側であるステークホルダーと今後どのような関係性を築いていくべきか考える必要があると思うのです。それこそが今後企業として発展・拡大していくなかで、コミュニケーション上の重要な価値を生み出していきます。
周年事業は、その進め方やプロセス自体に意味を持つ
----最近のお客様からのご相談は、どういったものがありますか?
塩谷
最近、周年事業をお手伝いしていて感じることは、周年イベントといった単体のご相談ではなく、周年における事業としての進め方やそのプロセスに関する相談が増えるようになったことです。周年は、準備も含めて2~3年程度かかる長期的な事業になることも多く、この長い期間をどうやって進めて行くのか、この事業に関わるクライアントサイドの人選も含めてアドバイスを求められることもあります。
多くの企業は周年事業をする上で、まず何をしたら良いのかわからない状態であることも多いです。そのため、私たちは計画の入り口の部分から関わらせていただいております。私どもの強みは、これまで様々なケースの周年事業に関わってきた実績と経験があるため、それぞれのクライアントが抱える課題に対する最適なご提案ができる。こうした点が評価をいただけているのではないでしょうか。
伊藤
設立記念、あるいは創立記念のタイミングは、10年あるいは数十年に1度あるかないかのもの。だからクライアントサイドでは、全てを仕切れるプロがいないもの当たり前なのです。なんとなくやることはイメージできるものの、いざ担当者になった時、予算設定や行程管理など実務面でどこから手をつけていいのかわからなくなってしまう。そうした不安を解消するところから私たちが寄り添って、事業運営を進めていきます。
私のクライアントの事例になりますが、事業承継されたとある会社の社長様から、ブランドの見直しをしたいという依頼がありました。そこで、50周年を機に周年事業としてプロジェクトを進めていくことになり、1年くらい前から理念体系の見直しやCI(コーポレートアイデンティティ)の再定義に取り組み、ちょうど50周年を迎えた周年イベントの場でこれら一連の成果を発表したのです。特にブランディングについては「次の50年のビジョン」ということに主眼をおきました。そうしたなかでVison Songを™作ろうという提案が受け入れられ、社員にアンケートをとり、ワークショップを経て、未来に対する想いを言葉で紡いで社歌を作りました。社内のコミュニケーション活性はもとより、採用やホームページへも派生して活用いただいております。
塩谷
まずはクライアントが「どのようにしたいのか」を、それこそざっくばらんに意見を出してもらうことから始めて、課題を明確にしていきます。ただ多くの場合、こうした取り組みは一朝一夕にできるものではありません。だからこそ、まずは周年事業担当者になったら、周年事業全体についての情報収集を多方面に行っていただくことが大事かなと思っております。
川杉
あえて言ってしまいますが、全ての企業が必ずしも周年だからといって対外的なプロモーションをする必要はありません。ただコミュニケーションという意味では、企業や事業が周年を機にプラスアルファのものを得るためならば、これほど有用な機会はないと思うのです。先ほどのお2人の話にもありましたが、一番大事なことは社員が周年事業を行う意義を理解し、これからもその企業に所属していく価値を見出せれば良いのです。ただ、ここまでに至る過程で時間も労力も多大なものになります。せっかくですから周年事業で生まれたものを、対外向けにも発信することでエンゲージメントを高め、それこそ外の人たちからかも「おめでとう」「素晴らしい会社ですね」と言ってもらえれば、周年事業におけるコミュニケーションは成功につながるでしょう。社内・社外ともにエンゲージメントを獲得しつつ、そこに関わる全ての人から祝福してもらえるようにする。周年事業を考える時、こうしたことを最初の段階で目標設定やマインドセットしておくことは、一度考えておくべき価値のあることではないでしょうか。
塩谷
初期段階での目標・目的設定はとても大切ですね。ここがぶれてしまうと大変なことになってしまいますので。
巷に溢れる"もったいない"周年事業。その事例と対策とは?
----"もったいない"と思う、周年はありますか?
塩谷
この仕事を長年やってきましたが、お客様から直接お伺いしたお話やメディアを通して感じてきた"もったいない"周年事業の例としては、下記5つが挙げられそうです。
1.社内で部署間の連携がとれていない。
2.経営陣のコミットメントが得られていない。
3.プロジェクト期間中に目的が変わってしまう。
4.内向きな企画・決定に終始している。
5.社内だけ、社外だけのコミュニケーションに偏っている。
こうしたことが様々な企業で周年事業をやるにあたり、実際に起こっています。
川杉
私たちの仕事は、社外の客観的かつ専門家としての視点をもって、こうした問題に陥らないようクライアントを導いていく媒介者の役割を担っています。ですから、2.の経営陣のコミットメントを引き出さなければいけないケースなどでは、社外からの客観的な視点を持つ者として、どんどん私たちのような立場の人間を頼って欲しいですね。
塩谷
4.についても、「社長が喜ぶから・・・」といった理由で企画が通ってしまうケースは多々ありますが、でも実は社長様に伺うとそんなことを望んでいないということがあります。大事なのは目的を達成するため「誰のために」行うのかということです。せっかく周年で全社をあげた取組を行うのであれば、社内だけでなく5.にもありますが、家族や取引先、お客様といった社外へのコミュニケーションも考えたい。となると、企業の存在意義を外部からも認めてもらえるような事業にしたいですね。
伊藤
1.の部署間の連携で言えば、担当する仕事が違えば他部署の人と関わることは少ないものです。ですから周年事業は、部門横断の横串で取り組めるという意味で、チームビルディングとしても絶好の機会なのです。
塩谷
プロジェクトを推進するにあたり、周年事業のためにどのような組織を編成するのか、またどの年代にフォーカスして取り組んでもらうのか、ということも大切です。どの組織にも必ずいる「社内インフルエンサー」を巻き込んで、この人を中心にして組織を動かしていくことも、周年事業を成功させるポイントになります。
川杉
周年事業は共通の同じ目的を持って関わる人たちが動くことが、成功への大前提なんですね。そこで得られた結果が、社会へとつながり、外部の人たちからも賞賛される。これが周年事業のコミュニケーションが目指す理想型ではないでしょうか。
私たちが考えるコミュニケーションがもたらす未来
----今回は「周年」をメインに聞いてきましたが、皆さんがその先に目指すことも教えてください。
川杉
いつも、この仕事を通して、素敵な世の中を創っていきたいと思っています。図らずも今年は新型コロナウイルスが出現したことで、社会の様々なところでパラダイムシフトが起こりました。次の5年、10年の中で何が起こってくるのか。そこに対して価値があることを考え、創り出していければ、世の中が良い方向に変わっていくと思います。そうした想いが自分の根底にはあるので、周年事業とコミュニケーションの関わり方をこれからも追求していきたいですね。
塩谷
確かに新型コロナによってコミュニケーションの状況が一変しました。さらに違った角度からの新しいコミュニケーションも求められるようになっています。新しい課題に対して、どうやって解決へとつなげていくのか、日々考えています。私の中では"様々な人たちと会話すること"にひとつの解答があると感じています。お客様の日常的でニューノーマルなコミュニケーション課題に、これからもアンテナを張って取り組んでいきます。
伊藤
私は「1人ひとりが活き活きと働くことができる組織・社会を創る」をキャリアミッションにしています。造語ですが「適材適所、適モチベーション」の具現化。これをひとつの企業内だけで完結するのではなく、社会全体でプラットフォーム化して、自分が就いた仕事で良いモチベーションをもって仕事ができる人たちや組織をたくさん創っていけるような社会をデザインしていきたいです。
◆JCDが提供する「周年事業」のご紹介
https://event.jtbcom.co.jp/anv_business/