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- Report
2021.07.27
持続可能な会議・イベントのカタチ
企業の環境対策やSDGsの取り組みを支援する”CO₂ゼロMICE®”と
MICEサステナビリティの最前線
企業のサステナビリティ経営に資する取り組み、特に環境への配慮やカーボンオフセットへの意識が高まっている中で、JCDでは2021年6月21日より「CO₂ゼロMICE®」サービスを開始しました。これはイベントを実施する際に、その会場で使用される電気を再生可能エネルギーに置き換えることでCO2をゼロにすることができる取り組みです。今回は本プロジェクトの核となって事業推進をしてきたMICEサステナビリティのプロフェッショナルが、その取り組みやお客様の声、今後の展望を語ります。
◆CO₂ゼロMICE®について
https://www.jtbcom.co.jp/service/energy/co2zero/
◆リリース:企業の環境対策やSDGsの取り組みを支援「CO₂ゼロMICE®」販売開始
https://www.jtbcom.co.jp/news/2021/1169.html
- MICE事業におけるサステナビリティとは
- イベント主催者様がシンプルな仕組みでCO2削減に取り組む方法
- 「CO₂ゼロMICE®」カーボンオフセットの仕組み
- よりサステナブルなコミュニケーションデザインを目指して
1 MICE事業におけるサステナビリティとは
石毛
MICE(ミーティング・コンベンション・各種イベント・展示会・学会・国際会議など)では、多くの参加者・運営スタッフが移動・参加するため、開催地に直接的・間接的な経済効果を生みます。しかし一方で、多くの資源が消費されることから、環境に対してマイナスの影響を与える側面もあります。海外では、MICE開催において「主催者」が社会的責任のある企業・団体として、環境負荷を軽減する取り組みを実施するなど、「サステナブル(持続可能)な会議・イベント開催」をすることが、"当たり前"になっており、実際にJCDが運営した持続可能な東京研修では、海外主催団体が"自ら"サステナビリティ方針を固め、JCDは会場となるホテルと一緒に、その要望に全力で応えています。
◆関連記事
MICEサステナビリティ:環境に配慮した持続可能なイベント事例:SDGsの取り組み:ホテルとの対談
https://event.jtbcom.co.jp/topics/mice-sustainability-case-study-1/
今、まさに会期中の東京2020オリンピック・パラリンピックは、持続可能性に配慮したイベントを運営するためのマネジメントシステムの国際規格であるISO20121の認証を取得しています。(※1)さらに東京では、MICE開催都市としての国際競争力を強化するために、MICE主催者や都内のMICE関連事業者を対象とした「MICEサステナビリティガイドライン」を2019年に策定(※2)しています。
※1 出典:(公財)東京2020組織委員会 WEBサイト
※2 出典:(公財)東京観光財団・Business Events Tokyo WEBサイト
このように、日本市場でも海外と同様に、会議・イベント開催において「持続可能性」が推進されており、主催する企業・団体は、MICEサステナビリティを意識した企画・運営が求められているのです。
石毛
JCDではイベント企画・運営会社として、まず主催者のESG、SDGsの達成における方向性を十分に理解し、その方向性に合わせたMICEサステナビリティの方針・調達コード・運用方法などを企画の段階から提案をします。また、MICE運営全体のプロデュース機能を担っていますので、会場・飲食・輸送・宿泊などのビジネスパートナー/サプライヤー選定に至るまで、サステナビリティ目線で行います。
会議やイベントを運営するには、さまざまな物品やサービスをサプライヤー/ビジネスパートナーから仕入れなければなりませんので、制作/装飾関連、飲食/ケータリング関連、エネルギー/電力関連、輸送や宿泊関連の調達方針の策定はとても重要です。
例えば、飲食/ケータリング関連における調達方針には、地域経済への貢献、CO2排出量の削減、文化継承支援、脱プラで環境にやさしい物品による提供、廃棄となるごみの削減などが含まれます。
具体的な事例として、「地域で生産される食材を調達」するようにします。フードロスにならないよう適量を見定め、輸送距離を短くすることで輸送によるCO2排出量の削減による環境負荷低減へ。仕入れた食材はその地域の会場で消費するので、必然的に地産地消に取り組むことができ、地域経済への貢献にもつながります。また、地域で生産される食材が、江戸東京野菜(※3)のような伝統野菜である場合には文化継承支援にもつながります。
※3 江戸から昭和40年頃(1965)にかけて現在の東京周辺でつくられていた、伝統野菜のこと。(出典:(公財)東京都農林水産振興財団 TOKYO GROWNウェブサイト)
◆関連記事
MICEサステナビリティ:持続可能な取り組み事例:調達①:飲食関連・ケータリング
https://event.jtbcom.co.jp/topics/mice-sustainability-case-study-2/
エネルギー/電力関連における調達方針には、再生可能エネルギーの利用、エネルギー使用量の削減、CO2など温室効果ガス排出量の削減などが含まれます。
具体的な事例として、多くの会場施設ではすでにLED電球は使用されているので、会議・イベント開催会場へ持ち込む照明もLED電球にし、同様に持ち込む電気機器も省エネ電気機器を使用することで、節電や省エネによる総エネルギー使用量の削減ができます。また、会場の空調温度は適正を保ち、リハーサル時は、使用しない会場の電気を消灯し、可能であれば会場の照明の減灯なども行うことで、更なる総エネルギー使用量の削減ができます。
そして、持続可能なエネルギーの提供として、「CO₂ゼロMICE®」を新たな付加価値として提案をしています。
◆関連記事
MICEサステナビリティ:持続可能な取り組み事例:調達②:エネルギー/会場電力関連
https://event.jtbcom.co.jp/topics/mice-sustainability-case-study-3/
大橋
旅行・観光のCO2排出量は世界全体の1割を占めると言われており、JTBグループでMICE事業を有するJCDとしても特に取り組むべき社会課題の1つと考えておりました。
JCDでは2017年より、観光関連事業者を中心に電力供給事業をおこなっており、そのノウハウと経験を活かし、脱炭素社会やSDGsの達成に向けた積極的な取り組みとして「CO₂ゼロMICE®」を開発しました。
2 イベント主催者様がシンプルな仕組みでCO2削減に取り組む方法
大橋
一方で、SDGsに取り組まないといけないことはわかっているが、具体的に何から始めて良いのかわからない。多くの企業ご担当者やご施設様からこのような声を聞いています。
吉田
例えば、多くのMICEが実施されるホテルでは、従来"節約"が難しいという認識が一般的でした。ただ、環境に対する意識の変化や近年の世界的な気候変動被害対策における脱炭素社会の形成はもはや必須であり、今や急務になっております。
サステナビリティへの取り組みの中でも、再生可能エネルギーやカーボンオフセットへの取り組みが重要視されていますが、コスト面でみても導入までのハードルが高く、実用化までは至らないケースがほとんどでした。
仮に企業活動で使用するすべての電気を再生可能エネルギーに切り替えるとすると、様々なハードルがありますが、「CO₂ゼロMICE®」であればシンプルな手続きでイベントに使われる電気だけを再生可能エネルギーに置き換えることができます。そして、参加者の方に「環境配慮やSDGsへの取り組み」として認識いただくこともできます。こうしたメリットから、多くのイベント主催者・施設様双方に活用いただければと思っています。
大橋
そのようなメリットを活用いただくことを想定し、この度「CO₂ゼロMICE®」を開発しました。また、ご利用いただければ、SDGsの達成目標に貢献できるだけでなくESG評価も得られます。
また先ほどの話にもありましたが、「CO₂ゼロMICE®」は、イベントごとのスポット利用が可能で流通性もあることから、ご利用機会に応じて柔軟に対応ができることが大きなメリットとなります。これは再生可能エネルギーを起源とした環境価値を証書化して流通させる仕組みである「グリーン電力証書システム」によって、他からその環境価値を購入することでCO2が排出されない再生可能エネルギーと同等の電気に置き換えられる「カーボンオフセット制度」を利用しているからこそ実現できるのです。
吉田
日本でのCO2排出量削減については、2050年までに実質ゼロを目標にしています。また近年、企業の気候変動への取り組みに対するファイナンス評価(TCFD)が加わったことから、環境配慮に対する考え方が急速に変化しています。そのほかにも温暖化対策推進法や東京都総量削減義務、RE100への取り組みなど、企業を取り巻く環境変化への対応は、さらに重要度が増していくと思っております。
3 「CO₂ゼロMICE®」カーボンオフセットの仕組み
吉田
実施のフローをご紹介します。イベントの実施開催が決まった後、電気使用量を独自のノウハウを用いてシミュレーションし、それに基づき再生可能エネルギー使用の「グリーン電力証書」を発行します。証書はイベントの10日前を目安に会場に送付。当日は会場の入り口に「グリーン電力証書」を掲げていただきます。参加者の方の目に直接触れますし、主催者様がイベントの冒頭で「本日のイベントはグリーン電力証書を購入し、CO2が発生しない再生可能エネルギーを使用しております」と宣言していただくのも効果的だと思っております。イベント開催後には、実際の電気使用量が発行した電力証書通りの範囲で賄えたのかどうかも私たちが検証いたします。
大橋
ご利用施設としては、まずはイベントやホール、商業施設などを想定しております。リリースして約1ヶ月ですが、現在全国27のホテル等のご施設様より導入もしくは導入予定とのお話をいただいています。(2021年7月26日現在)
吉田
導入いただいたホテルのご担当者様からは「まさにこれから絶対に必要とされるソリューションですね!さすがJCDさん!」と嬉しい声をいただきました。実際に全国にグループホテルを持つ本部の方に賛同をいただき、即全国のグループホテルで導入いただいた、というような実績もあります。私たちの取り組みが直接評価をいただき嬉しく思いました。
◆関連記事
企業の新製品発表会(ハイブリッドイベント)での実施事例
https://event.jtbcom.co.jp/case_event/online/case_event-sdgs1/
環境に配慮したサステナブル・イベント事例:SDGsの取り組み②
~導入施設様インタビュー~
https://event.jtbcom.co.jp/topics/mice-sustainability-case-study-4/
4 よりサステナブルなコミュニケーションデザインを目指して
石毛
MICEのサービス内容は、ステージ制作から、飲食、輸送、宿泊など多岐にわたるため、それぞれの専門分野においてサステナビリティに関する重要課題が異なります。MICEサステナビリティをより推進するには、業界全体で意見交換、情報や課題の共有をし、一緒に対策を講じることが必要だと思います。
また、MICE開催地における環境負荷軽減だけでなく、その地域への経済貢献のために、地域コミュニティと連携して取り組むことが不可欠になってくるでしょう。
今までのエコシステムを超えた連携を進め、MICEサステナビリティを通じて持続可能な社会の実現に貢献していきたいと思っています。
大橋
今後、環境配慮は"当たり前"としてますます加速していくものと考えており、「CO₂ゼロMICE®」の利用も拡大していくものと考えております。今後も、世の中のサステナビリティニーズや、加速していく社会変化に即したご提案をしていければと思っています。
吉田
現在はMICEに焦点をあてて商品化しておりますが、近い将来にはCO2ゼロステイ(宿泊)など、利用者が家を出てから帰路に着くまでを包括したカスタマージャーニーに合わせた商品の開発・販売もしていきたいですね。
JCDは、「CO₂ゼロMICE®」の推進を通じて、SDGs目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」、「SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を」の達成に貢献してまいります。
◆JCDの取り組むサステナビリティ
https://www.jtbcom.co.jp/company/sustainability/