- 人と組織の活性化
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2024.04.12
未来のあるべき姿からバックキャスト、社会的有用性の高い企業へ
新社長が語る強い思い
社会的価値を追求するJCDの未来志向戦略
2024年4月1日より、JTBコミュニケーションデザイン(JCD)の代表取締役社長執行役員に藤原卓行が就任しました。新たにJCDを率いる藤原が、就任にあたっての思い、決意をインタビュー形式で語ります。
藤原卓行(Fujiwara Takayuki)
1991年中央大学経済学部卒 日本交通公社(現JTB)
2013年JTBコーポレートセールス 第三事業部長
2019年JTB 海外仕入商品事業部 航空仕入部長
2020年JTB 執行役員 個人事業本部 事業統括部長
2022年JTB 執行役員ツーリズム事業本部 仕入商品事業部長
2024年JTBコミュニケーションデザイン(JCD)
代表取締役社長執行役員就任
高校野球を愛す、1969年生まれ55歳
―社長に就任した今の率直な思いを聞かせてください
ワクワクすると同時に、託された責任の大きさを痛感しています。ステークホルダーの皆さまから激励の言葉を多数いただきましたが、JCDに対する期待の大きさがひしひしと伝わってきて、身の引きしまる思いです。
―藤原社長のこれまでの経歴、実績を簡単に紹介してください
1991年に入社して以来、33年間、主に法人営業を担当してきました。特に企業のミーティング・イベントの領域で、お客様の課題解決に力を注ぎました。組織の運営職になってからは、2015年社内で「ダイバーシティアワード大賞」を受賞。その後「営業コンピテンシーモデル」を構築し、JTB内で生産性日本一の達成に貢献しました。
「営業コンピテンシーモデル」とは、企業活動の前提となる営業活動のプロセスを、「デジタル活用」と「デジタル化できない営業活動」の両面を踏まえて仕組み化したものです。お客様に対してどのように行動すべきかフレームワークを構築し、成功事例を横展開できるよう定性的な行動パッケージにして(※注)、再現可能な営業モデルを構築しました。実践を重ねて仕組みを支店内に浸透させた結果、社員の成長とチームで戦う体制に支えられ、生産性日本一を達成するに至りました。
直近の4年間は、仕入れから販売に至るバリューチェーン全体でのCX向上に取り組み、よりよい顧客体験を提供できる体制をつくりました。
※注:顧客接点の創出が上手な人、先手を打つソリューション提案が得意な人、顧客継続率が高く総需要吸収ができる人などの行動から、「ターゲット選定」「顧客接点拡大」「ソリューション提案力」「顧客・データ分析と活用」「顧客継続率向上」「プライシング」「時間創出」「スピード・タイミング」などの営業必須要素を抽出し、定性的な成功アクションをフレームワークとカスタマイズでパッケージ化した独自の仕組み
―コロナ禍を抜け、ようやく景気に明るい兆しが見えてきました。昨今の経済状況や世情を鑑み、今後数年間の日本のビジネス環境を、どのようにとらえていますか?
コロナがひと段落し、人流の活発化と、円安基調による堅調な企業業績を背景に、日本のビジネス環境は活況に向かうと見ています。一方で人手不足は一層深刻な課題となり、デジタル化の加速と人的資本の強化は必須です。加えて非財務情報の重要性はいよいよ高まり、ESGを重視しなければ競争力を失うことになるでしょう。
特に人手不足への対応は、日本のあらゆる産業・企業にとって大きな課題です。DXが叫ばれて久しいですが、デジタル施策は「リアルの価値を活かす」ことが目的であり、最後は必ず人的資本につながります。組織として、それぞれの人の強みを活かす人財開発は欠かせないファクターで、私はここにJCDのビジネスチャンスがあると考えています。人に関する課題は、いずれの企業もほぼ共通しています。「人財への投資による競争力強化」「サステナビリティ」「働きがい」「リアルの価値」、これらは当社の事業と極めて親和性が高いテーマです。
また、円安はインバウンドの追い風にもなっています。日本政府観光局(JNTO)によれば、2024年1月の訪日外客数は268万8100人で、2019年同月比でほぼ同数を記録。訪日外国人数は、コロナ禍前のレベルまで回復しつつあります。昨今の個人の訪日旅行者は、日本の文化や価値を求めるなど、目的をもって来日する傾向にあります。BtoBも同様に来日目的が明確になっていくと考えられ、企業向けのソリューションを得意とする当社にとって、インバウンド市場拡大の好機ととらえています。
―そのようなビジネス環境の中で、JCDが担う役割とは?
我々が果たすべき役割は、経営理念として記す通りです。未来のあるべき姿に向けて、ステークホルダーの皆さまとグローバルレベルで共創し、コミュニケーションをデザインすること。そして、社会・地域の持続的な発展に貢献し、必要とされる存在であり続けることです。
―JCDがお客様に提供すべき価値や具体的な取り組みについてお聞かせください。
ミーティング&イベント、プロモーションなどのコーポレートソリューション領域では、「戦略構築から施策実行」まで、JCDあるいはJTBグループがワンストップで提供できる。これが我々の強みです。国際会議や展示会等における多数のプロジェクトマネジメントの実績は、大きな価値であり、この強みを伸ばしてさらに事業を拡大したいと考えています。
また、エリアマネジメントの領域では、地域の価値を中長期的にプロデュースするエリアマネジメントスタイルを構築していきます。具体的には、施設運営における管理運営システムの構築と運用、交流創造ソリューション(自主事業・貸館事業推進、物販機能、情報発信機能を活用した地域の賑わい創出等)を、観光案内所やボランティア運営にインバウンドPRなどを掛け合わせ、地域の価値創出・価値向上に貢献したいと思っています。
―サステナビリティへの取り組みについてはいかがでしょうか?
サステナビリティは、いうまでもなく企業活動のベースです。以下の3つの軸を事業の基本要素ととらえ、積極的に取り組みます。
まずは事業活動を通じたサステナビリティに取り組みます。
事業活動における環境負荷軽減に取り組むとともに、ステークホルダーと価値観を共有し、環境に配慮したソリューションの高度化を図ります。例えば、主催展示会における環境負荷の低い建材を用いた展示ブースプランの提案や、CO₂ゼロMICE®を導入したCO₂排出量の削減。加えて、アクセシビリティやユニバーサルデザインへの配慮などにも取り組みます。また、昨年よりスタートした「こころ羽」プロジェクトは、サステナビリティの観点で社会課題を解決する事業であり、当社ならではの視点から生まれました。このような動きを更に加速させたいと考えております。
次に、多様な価値観と生産性の高い組織の形成です。
社内の人財価値を最大限に引き出す取り組みを始めます。また、社外に向けてはサステナビリティレポートも継続して開示します。
最後に、企業として社会貢献活動も行います。
社内外に対してインパクトのある社会貢献活動を実践するとともに、多くの社員が活動に参加できる仕組みを構築したいと考えています。
―これから「2025 大阪・関西万博」や「第20回愛知・名古屋 競技大会」、「2027横浜国際園芸博覧会」など、国際的な大イベントがめじろ押しで、JCDの活躍の場も増えそうです。
我々の事業領域を広げる大きなチャンスだと思っていますし、川上から川下までの業務支援に対して大いにチャレンジしていきたいと思っています。また、世界規模のイベントで新たに出会う企業との接点は重要だと考えています。最先端の事業を手掛ける未来志向の企業の方々とは、社会課題解決の糸口を未来志向でともに考えていける関係性構築のきっかけになると思っています。今後開催される世界規模のイベントの成功に貢献するとともに、共創する未来社会への一歩を踏み出したいと思います。
―藤原社長から見て、JCDのビジネス戦略上の「強み」とは何でしょうか?
強みは、「さまざまな領域における専門性」と、「各領域における多彩なソリューション」がある事です。
当社は大きく10の事業領域に携わっていますが、それぞれ専門性が高く、さまざまなソリューションを提供しています。専門領域が多岐にわたり、強みを発揮できる材料が豊富にある事で、お客様ニーズに合致するものが見いだせますし、組み合わせ次第で、お客様が描く「未来のありたい姿」に近づけるソリューションの提案が可能です。我々の強みを掛け合わせて、お客様の成長戦略を伴走する「統合的なソリューション」を提供する。これがJCDの強みであり、市場価値と考えています。
―特に強化していきたいこと、克服したい課題はありますか?
取り組みたい課題は、次の3項目です。
まず、突出した事業を創りたいと考えています。
単に市場を取ると言う事ではなく、ソリューションの高度化とプロデュース力に磨きをかけ、提供領域をまたいだソリューションを掛け合わせて最強のサービスを提供する、唯一無二の事業です。我々の強みを組み合わせれば、マーケットは無限だと考えています。
次に、顧客トータルマネジメント(営業力)の強化です。
強みと営業戦略は、セットでこそ機能します。中長期的な視点でお客様の全体像を把握し、顧客マネジメントを実践する営業スタイルへと変えていきたい。そのために、営業のノウハウを定性的に仕組み化する「営業コンピテンシーモデル」の構築に取り組みます。新たな営業スタイルの浸透により、CX向上と顧客接点の拡大、事業領域の拡大を目指します。
最後に人的リソースの最適活用です。
人財育成への投資を実施します。その前提として、DE&I(多様性・公平性・包括性)Diversity(ダイバーシティ:多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(インクルージョン:包摂性・チームでできる環境構築)、を推進します。 加えて、Belonging(ビロンギング:帰属意識・安心できる環境)も欠かせない要素と捉え。DEIB観点での組織力向上・人財開発への取り組みを強化し、人的資本経営に注力します。
―「人的資本経営」は、JCDのみならず多くの企業に共通するテーマです。社長は、どのように人的資本を高めていこうと考えていますか?
私が大切にしているのは、人の強みや得意分野にフォーカスする「美点凝視」という考え方です。美点凝視は、多様な人財を育成するのに欠かせない視点です。1,300人のJCD社員、それぞれの強みや得意分野を伸ばすことで、組織は必ず強くなります。美点凝視のために、まず社員との時間を大切にしたいと思います。当社は、コミュニケーションをデザインする会社ですし、対話は極めて重要だと考えています。
特に、受け手側のことを理解しなければ、コミュニケーションはデザインできません。まず一人一人を知ること、胸襟を開いてお互いを理解することから始めたいと思っています。
理解や自立が進めば、社内のあちらこちらで様々な反応が生まれるはずです。またJCDには、秀でたソリューションを開発できる素晴らしい人財がいます。人財価値を最大化する視点を持つという私の得意分野を発揮して、一人一人の能力をエンパワーメントしていくつもりです。
―「コミュニケーションをデザインする」を、社長自身の言葉で説明するとしたら?
コミュニケーションの価値は、間違いなく受け手が決めるもので、受け手を理解して初めてこちらの意図を伝えることができます。営業でいえば、受け手であるステークホルダー(お客様)を理解して、初めて我々が提案できるのです。営業の最大の仕事は、お客様の本質ニーズに迫ること、すなわちお客様の本音を引き出すことです。本音を引き出すには、お客様の視点を持ちながら、自信をもって対話ができる「人間力」が必要です。
「専門性(自信)×コミュニケーション力×論理的思考×パッション!=お客様がポロリと本音」
私が考えるお客様の本質ニーズを引き出す方程式です。人間力は勉強で身につくものではありませんが、実体験を積み、専門性を高め、論理的思考で、自信をもって自分の考えや思いをぶつければ、そこに信頼関係(お客様にとってのBelonging)が育まれ、いつしかポロっと本音がこぼれ出る。人間力を高めて相手とのBelongingを醸成することが、コミュニケーションをデザインするということではないでしょうか。
―最後に、JCDの社長としての覚悟、信念をお聞かせください。
未来のあるべき姿をバックキャストし、ステークホルダーの皆さまとグローバルレベルで共創する企業でありたい。それが今の私の強い思いです。社会から必要とされる存在であり続けるべく、「人的資本経営」を信念に、まず自社から改善活動を実践します。人財の価値を高め、組織力を強化していくことが、ステークホルダーの皆さまへの価値提供につながると考えています。すなわち、
①未来を見つめながらお客様とともに成長し、社会貢献度を高める
②社員一人一人の強みを見つけ伸ばし、エンパワーメントする
この2軸を同時並行で進め、会社全体の成長を目指していきます。
そして、JTBグループの成長戦略を牽引する中核事業会社へと成長させます。これまでJCDが築いてきた素晴らしい財産を活かし、よりよい組織をつくっていきたい。JCDは、グループの中でも個性的な存在で、可能性や魅力がたっぷり詰まっています。すでにやりたいことがたくさん浮かんでいます。どうぞ期待してください。