- 訪日インバウンド促進
- Report
2022.09.27
コロナ禍で進化したインバウンドプロモーションの新定番
デジタルネイティブ世代が語る
オンライン配信を利用したプロモーションの利点と活用のポイント
コロナ禍であらゆる人流が遮断される未曾有の逆風の中で、訪日インバウンドのプロモーション分野ではオンライン配信を活用した取り組みが数多く生まれました。JCDでは、そんな逆風時にも関わらず、デジタルネイティブ世代の若手社員たちが多くのプロジェクトの一翼を担っています。
このコロナ禍で数多く生まれたオンライン配信は「人流再開までの一時的な繋ぎ」でも、「リアル体験の代替品」でもないようです。あらためて問われる「新定番」としてのオンライン配信を利用したプロモーションの利点と活用のポイントについて語ります。
- JCD流、オンラインを活用したインバウンドプロモーションの事例とその成果
- 見えてきた、オンライン配信によるプロモーション成功のコツと注意点
- デジタルネイティブ世代が見据えるこれからのオンラインプロモーションの展望
1 JCD流、オンラインを活用したインバウンドプロモーションの事例とその成果
―はじめに、エリアマネジメント部プロモーション事業局のミッションについて教えてください。
中山
私達のミッションは、人流と交流の場を創り、地域に「にぎわい」と経済の活性化をもたらすことです。その中でも訪日前の方々に向けた誘客プロモーションの領域は我々の得意とするところです。しかしながらコロナ禍においては、そもそも海外からの観光客を日本に呼べない状況が続き、プロモーション施策もオンラインが中心になり、もどかしい状況が続いていました。そこでJCDでは、その環境をうまく活用し、来るべき訪日解禁に向け、まずはオンライン上で日本の魅力を疑似体験いただき、興味を持っていただくことはできないか、と模索する事となりました。
―今回は、デジタルネイティブ世代のお二人が担当された、オンラインインバウンドプロモーションの事例を紹介いただけるとのことですね。
三谷
はい。まず、国内の名所や人気の観光スポットなどの地域の魅力を全世界にライブ中継するオンライン配信での配信元の支援事業をご紹介します。配信支援というと、中継配信方法や機材的な支援が思い浮かびますよね。もちろんアクセス集中に備えた入念なIT環境といったハード面のご支援も担当しますが、それ以上にソフト面、コンテンツ内容についての支援を重要視しています。
視聴先となる海外の主要箇所での関心事を現地調査した際、配信元が露出したい景色と視聴先の興味が異なることに気づき、更に調整を進めます。そしてコンテンツの精度を高め、魅力の最大化に向けた台本の作成。私たちJCDの知見、例えば離脱を減らすためのテクニック等を盛り込み入念な事前準備のもと、当日を迎えます。なかには配信デバイスに初めて触るといったご担当者様もいらっしゃるので ご支援は多岐にわたった完全オーダーメイドとなります。
宮崎
私が印象に残った配信支援事業は視聴者総数が13,000人超となった、山形県の樹氷ライブ中継です。配信当日はロープウェイも止まるほどの悪天候。山の天候を踏まえ、悪天候時に使用するプランでの配信となりました。海外の視聴者にとって普段見ることのできない非日常的で迫力満点の猛吹雪をお届けできたことはもちろんですが、美しい樹氷の映像のインサートのタイミングや、ワイプの使い方、テロップの入れ方など、経験を踏まえてこだわりぬいた成果が出て本当にうれしく感じました。
この経験から、どんな状況に置かれてもフレキシブルに対応できる、そんな担当でありたいなと思いました。
―今さらっとおっしゃいましたが、視聴者13,000人超ですか?!配信の視聴数が多いと嬉しいものですね。
三谷
はい、それはもちろん!トラブルなく無事終了するだけでなく、視聴回数やいいね!、視聴者からのコメント、更にライブ配信後にその地域のSNSのフォロワー数が増えたりなど、実施後の効果検証をまとめる時に、あーやりきったと、この仕事へのやりがいを感じます。
宮崎
配信元のご担当者様から、「視聴者の方からすごくマニアックな質問コメントがきて、興味の深さが分かったのが嬉しかった」と感想をいただいたことがありました。動画のコメントを受け付けることは、想定問答の準備はもちろんのこと、視聴先の現地調査から質疑を作成し、配信元での的確な回答準備が必要です。事前準備を念入りにしてもそれを上回る質問が来ることがあるので、運用上の難しさはありますが、このようなお声をいただくとやってよかったな、と感じます。
中山
この例のように直接個人の観光客の方に向けた配信する事例以外に、海外のメディアに向けたオンラインツアーの配信を行うケースもあります。取材旅行のオンライン版ですね。
宮崎
先日は、アメリカのロサンゼルスからメディアの方をオンライン会議ツールでお招きし、東京各地と中継したオンラインツアーを実施しました。都内の最新スポットやアピールポイントを中継するだけでなく、もちろん双方向でのコミュニケーションを重視した構成としました。こちらもハード面での支援はもちろんのこと、JCDならではのTV・雑誌含めた海外媒体への出稿の知見を活かすことができた取り組みとなりました。
三谷
他には、地域の自治体やDMO※を中心としたクライアント様側で企画された案件の運用を相談いただくケースもあります。海外の方の目線で見た時に、一層興味を持ってもらえるようなコンテンツの選定や露出方をブラッシュアップするお手伝いをさせていただいています。
※DMO:地域観光づくりの推進や調整を担う、観光局や機構等の法人組織
2 見えてきた、オンライン配信によるプロモーション成功のコツと注意点
―オンライン配信に関して多くの経験を踏まれてきたお2人にお聞きしたいのですが、オンラインツアー配信によるプロモーションを成功させるコツとは、なんでしょう?
宮崎
私がいちばん重要だと考えるのは、事前の告知と集客です。どれだけ最高の配信を行ったとしても、視聴者がいなかったら意味がありません。いかに多くの人に見てもらえるか、いかにたくさんコメントもらえるかというところを伸ばすためには、配信前にどれだけ集客できるかが肝心です。
JCDでは、SNS広告やオンライン広告をターゲットの地域に向け、あらかじめ集客率を高めてから配信することを強くご提案しています。
三谷
私は、コンテンツ制作とプロモーション施策でしょうか。海外オフィスとも連携し、各市場の旅行ニーズのデータに基づき魅力的なコンテンツを制作し、効果的にプロモーションを行うこと。
特にコンテンツ制作にあたっては、配信元のご担当者様に、海外の興味関心ポイントを肌で感じていただき、今後のプロモーションの方向性、ブランディングを考えていただくきっかけにすること、これこそが最大のメリットだと感じています。そのために配信元のご担当者様にはできるだけ配信内容だけに集中していただけるように、工程管理もサポートします。
宮崎
JCDではオンライン配信後も、例えば「この内容は、シンガポールからの視聴者に反応が良かったたから、シンガポール向けの広告配信をこのクリエイティブで強化してみましょう」といった分析・レポート、そして活用をご支援しています。
―今後、人流の再開に伴い、オンライン配信は役目を終えていくのでしょうか?
中山
いや、新たな定番施策のひとつとして残っていくと思います。既に商談会や、バイヤー向けに日本の観光の魅力を伝えるセミナーなどはオンライン化が定着してきていますし、今後リアルでの開催が戻ってきたとしてもハイブリッドという形で残っていくと予想しています。オンラインツアーも同様で、今後は「リアルの代替」という位置づけを脱して、リアルではできないことを補完する打ち手のひとつとして、引き続き活用されていくと考えています。
―人流の再開後は、どのようなケースにオンライン配信は有効なのでしょうか?
三谷
活用メリットが大きいのは、観光客のアクセスが容易でない地域かと思います。例えばメディア向けの取材旅行を誘致するとしても、リアル開催の場合、交通手段や宿泊など手間とコストがかなりかかってしまいますが、オンラインツアーならば比較的低予算で取り組むことができます。まずはオンライン配信でテストマーケティングをし、視聴者の生の声や反応を見ながら分析、戦略を練り、段階的かつ効果的にプロモーションを実施していく流れをお勧めしています。
―一方でオンライン配信はやってみたいけれどやり方がわからない、というケースもありそうです。
三谷
JCDでは、お打ち合わせから当日の配信まで、はじめて取り組むお客様でも安心してお任せいただけるようサポートするスキームを確立しています。まずは気軽にご相談ください。
3 デジタルネイティブ世代が見据える、これからのオンラインプロモーション
―これからリアルのイベントも増えてきそうですが、一方でオンライン配信事業の今後については、どのような展望を持っていらっしゃいますか?
三谷
コロナ禍によって得られた良い面として、従来の「当たり前」を見直すきっかけとなったと感じています。セミナーやイベントはリアルじゃなければできないというこれまでの常識は既に変わっています。
しかしながらまだ「この魅力はリアルじゃないと伝えられない」とのご意見もお聞きします。その理由は様々でしたが、なかには「オンラインはやり方がわからない」という事が理由の一つにありました。そこがハードルであれば、私たちがサポートさせていただくのでご安心ください、とお伝えしたいです!オンライン配信は思っているよりも気軽に始められる施策だということを、これからより多くのお客様に知っていただけたらと思っています。さらに、オンライン配信のシリーズ化や映像のクオリティアップをめざしたいですね。
宮崎
実は私自身も自分でオンラインツアーに参加してみてとても衝撃を受けたひとりです。オンラインツアーでは、同じ時間に地球上の別の場所でそこにいる人々の生活や息づかいを感じることができます。動画配信サイトの編集された動画を見るのとは、臨場感をはじめ一味も二味も違うと感じました。私が体感したこの感動を世界中のみなさんに広めたいという意味でも、これからもオンライン配信事業に積極的に取り組んでいきたいと思っています。
―最後にJCD NOW!の読者の方に向けて伝えたいことはありますか?
宮崎
「オンライン配信はもはや真新しくもないありきたりな施策」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。たしかにオンライン配信やライブ配信自体は以前からあった技術で真新しいものではありません。しかしいざカメラを握ってみると「全然思ったようにうまくいかない」という壁に当たるご担当者様がとても多いのも事実です。お伝えしたいのは、やはり見るのとやるのとでは大違いだということ。やりたいと思っても、機材、通信などのIT環境、適切なプラットフォームやアプリの操作方法など、専門的すぎて時間だけがかかり、なかなかうまくはいきません。少しでもオンライン配信に興味を持っていただけたら、ぜひ早め早めの準備と情報収集をお勧めいたします。
三谷
私たちJCDのチームには、コロナ禍におけるオンライン配信の成功体験や失敗談など、多くの試行錯誤の経験則が、データとして蓄積され共有されています。分からないところは分からないと遠慮なく頼っていただけると、私たちもお手伝いの幅が広がります。今後ぜひ皆様のお役に立てる機会があれば嬉しく思います!