- 訪日インバウンド促進
- Report
2025.04.03
インバウンド向けプロモーションで効果を上げるためには?
【セミナーレポート】メーカーや小売業界の実事例をご紹介

コロナ禍の収束後、インバウンドビジネスの市場が盛り上がっています。2023年に日本を訪れた外国人は、2,500万人を超えました。日本政府観光局は、2030年には6,000万人の訪日を目指しています。
訪日外国人の旅行消費額も増えています。コロナ前の2019年とコロナ後の2023年を比較すると、旅行消費額の総額と、一般客1人当たりの旅行支出額は、どちらも増加しました(出典:観光庁 訪日外国人の消費動向)。日本では今後も大型イベントの開催が続くため、訪日外国人数、旅行消費額ともにますます伸びていくと予想されています。
こうした状況下で、インバウンド向けプロモーションに取り組む企業が増えています。しかし、「何から始めたらいいのかわからない」というお悩みを抱えている企業が多いのが実情です。
JTBとJTBコミュニケーションデザイン(以下、JCD)は2024年11月27日にオンラインセミナーを開催。両社が支援した4つの事例をご紹介しながら、インバウンド向けプロモーションで効果を上げる方法について解説しました。セミナーの内容をご紹介します。
- インバウンド向けプロモーションの担当者が抱えるお悩み
- インバウンド向けプロモーションの事例紹介
事例1)リアルなタッチポイントで外国人の反応を得て、プロモーション施策に反映(大手醤油メーカー様)
事例2)インフルエンサー×リアルイベントの組み合わせで販売促進(一般医薬品メーカー様)
事例3)在日外国人の目線を取り入れて改善点を理解(大手ディベロッパー様)
事例4)外国人の興味を知り、プロモーション手順を明確化(アミューズメント施設様) - 日本人目線と外国人目線の共通点を見つけることがプロモーションの鍵
- 幅広い事業領域を持つJTBが、戦略立案から販売までトータルで支援
●登壇者プロフィール
株式会社JTB ビジネスソリューション事業本部 東京中央支店
営業推進課 グループリーダー
浦野 雄次
株式会社JTBコミュニケーションデザイン コーポレートソリューション部
ゼネラルプロデューサー
松村 成史
1 インバウンド向けプロモーションの担当者が抱えるお悩み
新型コロナウイルスの影響が収束し、外国人旅行客が増加する中で、インバウンド向けプロモーションに力を入れる企業が増えてきました。業種は食品や飲料、菓子の他に、ドラッグストアで販売されている一般医薬品など、一般消費財メーカーが挙げられます。また、インバウンドに商機を見出している商業施設・ホテルなども含まれます。
コロナ前と比べて、訪日外国人の好みは多様化していると言われています。そのため、プロモーションの考え方も大きく変えなくてはなりません。これまでのように国籍や年齢といった大きな分類だけで考えるのではなく、日本に何回くらい来ているのか、どういうことに興味関心があるのかを知る必要があります。しかし実際には、多くの企業が「何から始めたらいいのかわからない」と悩んでいる状態です。
JTB・JCDにいただいたお問い合わせを参考に、コロナ後のインバウンド向けプロモーションにおける課題についてまとめました。
・初めての取り組みなので、大きな予算をかけられない。
・どの国の人が商品を購入しているのか、把握できていない。
・調査に使える費用が限られている。
・売上拡大につながる成果を求められているので、まずは成功体験を作りたい。
どうすれば、これらの課題を解決し、インバウンド向けプロモーションを成功に導けるのでしょうか。課題解決のキーワードは「テストマーケティング」です。仮説を立てて、訪日外国人とのリアルなタッチポイントを活用しながら、一人一人の好みや特性に合わせたプロモーションを実践することが重要です。
JTBグループでは訪日旅行前の「旅マエ」、旅行中の「旅ナカ」、旅行後の「旅アト」の全てにおいて、リアルとデジタル両方のタッチポイントを保有し、さまざまなお客様の課題を解決してきました。今回はリアルのタッチポイントを活用した「旅ナカ」の施策にフォーカスして、メーカーや小売業界の事例をご紹介します。
2 インバウンド向けプロモーションの事例紹介
事例1)リアルなタッチポイントで外国人の反応を得て、プロモーション施策に反映(大手醤油メーカー様)
●施策
観光案内所「shibuya-san」を活用した試食・販売+アンケート
●商品
オリジナルの醤油・味噌が中心(価格は1,000円前後)。実店舗はメディアに頻繁に取り上げられるなど、日本人女性を中心に賑わっている。
●課題
訪日外国人がお土産として購入する可能性はあるのか。また、味やパッケージ、販売価格が外国人に受け入れられるのか、反応を探りたい。
●JCDからの提案内容
渋谷の観光案内所「shibuya-san」を訪れる訪日外国人に対して、試食+インタビュー、商品の販売を行う。
●成果
・訪日外国人の反応をダイレクトに確認することができた。
・商品の訴求ポイントを把握できた。
・各国のお土産に関する考え方を確認できた。
・どの国をターゲットとすべきか参考にできた。
・味だけでなく、販売価格など細かな点に関してもヒアリングできた。
松村
shibuya-sanは空港からリムジンバスに乗って、降りたらすぐに目に入る場所にある「旅の基点」であるため、多くの訪日外国人が集まります。このような観光案内所を活用したことが、このプロジェクトのポイントです。さらに、shibuya-sanでは飲食を伴う試食販売や飲食サンプリングも可能ですから、味に関しても訪日外国人に直接ヒアリングできます。
プロモーション担当者にとって、外国人のリアルな反応は社内を説得するための根拠になるので、とても重要です。
浦野
JTBグループではshibuya-sanの他にも、多くのリアルなタッチポイントを持っています。例えば大阪のタッチポイントなら、今後大阪で開催される大型国際イベントを見据えて利用することもできます。
事例2)インフルエンサー×リアルイベントの組み合わせで販売促進(一般医薬品メーカー様)
●施策
インフルエンサータイアップ+SNS分析+サンプリング
●商品
ドラッグストアを中心に販売している一般医薬品
●課題
訪日外国人が商品を購入していることは把握できているので、どのようにPRを行ったら効果的なのかを知り、売上アップにつなげたい。
●JCDからの提案内容
[フェーズ1] マイクロインフルエンサー(※1)による投稿で、PRの切り口や反応を確認
[フェーズ2] 戦略とクリエイティブに落とし込み
[フェーズ3] KOLインフルエンサー(※2)による投稿
[フェーズ4] 観光案内所およびドラッグストアでのサンプリングイベントを開催し、KOLインフルエンサーの投稿で集客
※1 マイクロインフルエンサー:数千人程度のフォロワーがいるインフルエンサー
※2 KOL(キーオピニオンリーダー)インフルエンサー:数万人程度のフォロワーがいるインフルエンサー
●成果
・プロモーション期間中の販売実績が伸びたため、効果的と判断した。
・中国人に絞ったプロモーション活動でスモールスタートし、翌年度は対象国を拡大して実施した。
松村
このプロジェクトのポイントは、2つあります。1つは、デジタルの施策としてインフルエンサーを活用したこと。もう1つは、リアルなタッチポイントである観光案内所およびドラッグストアでのプロモーションを組み合わせたことです。
旅マエにインフルエンサーを活用するケースは多いのですが、デジタルとリアルを組み合わせることで、旅ナカでも十分に効果が得られることがわかりました。
浦野
マイクロインフルエンサーを活用すれば、初めから大きな予算をかけなくても、さまざまな施策を試せます。
また、インフルエンサーによるデジタル施策はもちろん大切ですが、投稿を見て外国人がどう思ったのかを把握することに意味があります。この事例では、ターゲットをリアルなタッチポイントに誘導したことで、デジタル施策に対する反応を定性的なデータとして取得できました。
事例3)在日外国人の目線を取り入れて改善点を理解(大手ディベロッパー様)
●施策
口コミ調査+在日外国人コミュニティを活用した調査
●エリア特性
東京中心部の主要駅を有するエリアで、周辺には観光地もある。
●課題
訪日外国人がほぼ必ず訪れるエリアなのに、自社の商業施設は素通りされてしまっている。GPSデータから、どの国の人がエリアに滞在しているかは把握しているが、どうしたら自社施設を訪問してもらえるかわからない。改善点を知りたい。
●JTBからの提案内容
・調査設計
・口コミ分析(デスクトップリサーチ)
・訪日外国人に向けた街頭インタビュー
・在日外国人によるパネル調査・街なかツアー
●成果
訪日外国人が訪問先を決定する際の"インサイト"を理解することができたため、改善施策が明らかになった。
浦野
このプロジェクトではターゲットを明確にするために、口コミ分析や街頭インタビューといった調査分析と、街なかツアーという実践を組み合わせました。JTB・JCDでは在日外国人留学生・外国人のネットワークを持っているため、リアルな外国人の声をすぐに収集できる体制が整っています。この事例のように、定量的なデータだけでなく定性的なデータも読み取って施策を提案できるのが強みです。
松村
日本人にインタビューすると、どうしても日本人としてのバイアスがかかった回答になってしまいます。リアルな実情を知るためには、外国人を起用して調査することが非常に重要です。
事例4)外国人の興味を知り、プロモーション手順を明確化(アミューズメント施設様)
●施策
在日外国人コミュニティ+インフルエンサーを活用したイベント開催
●施設特性
主に日本人を対象とした、在大阪のアミューズメント施設
●課題
大型国際イベントが近づいているため、施設への来場者数を増やしていきたい。しかし、外国人の好みや特性が把握できていない。そのため、適切な受入環境整備や、付加価値提供の方法がわからない。
●JTBからの提案内容
・訪日外国人コミュニティを活用した「コト体験」イベントとワークショップ開催
・KOLインフルエンサーを活用した情報発信と、効果の検証
・定性的・定量的アンケート実施とアドバイス
●成果
・訪日外国人のリアルな声を収集できて、ターゲットの理解が深まった。
・次年度に向けた戦略設計に活用できる情報を得られた。
・受入環境整備、商品開発、プロモーションなどの手順が明確になった。
浦野
このプロジェクトでは、訪日外国人が何に興味を持っているのか知るところから始めて、そこからどのような手順でプロモーションを進めていけばいいか提案しました。
松村
手順はとても大切です。いきなりプロモーションをしても外国人には来てもらえないでしょう。それに、受入環境が整っていなければ、外国人が来てくれたとしても、何をすればいいのかわからないので離脱してしまいます。
では、受入環境整備とは具体的に何をすればいいのかというと、施設内の表示を外国語にすることや、飲食店のメニューを指差しで注文できるように改良することなどがあります。こうした改善策を段階に応じて提案し、一貫して伴走できることがJTB・JCDの強みです。
3 日本人目線と外国人目線の共通点を見つけることがプロモーションの鍵
ここまでご紹介してきた4つの事例に基づいて、インバウンド向けプロモーションのポイントをまとめたのが以下の図です。
日本人が実施するプロモーションは日本人目線、すなわち主観に偏りがちです。主観をしっかり持ちながらも、客観的な外国人目線を取り入れて、両方が重なる場所を探していくことが重要です。共通点を見定めてプロモーションの戦略を決めていきましょう。外国人目線を取り入れるためには、リアルな接点や外国人コミュニティを活用すると効果的です。
まずはテストマーケティングや簡易調査から始めて、そこで得られた定量的・定性的なデータを根拠とすれば、社内を説得し、より大規模な施策に進むことが可能になります。
浦野
今回ご紹介した4つの事例は全て、心の通ったマーケティング活動だと考えています。JTB・JCDはメーカーや小売業界のお客様の課題に寄り添い、お客様がターゲットとしている外国人の目線でプロモーション施策を検討し、提案してきました。私たちが大切にしているのは、お客様や、お客様のお客様と交流することです。これからも心の通ったマーケティング活動に取り組んでいきます。
4 幅広い事業領域を持つJTBが、戦略立案から販売までトータルで支援
JTBグループのソリューションは、以下の図で示しているように5つのフェーズがあります。まずは調査・分析を行って戦略を策定し、訪日外国人の受入環境を整備します。それを踏まえた上で商品を造成し、認知向上のための施策を実行し、販売につなげます。さまざまなパートナーと連携しながら、一気通貫で支援することが可能です。
リアルの施策とデジタルの施策は別々ではなく、総合的に行うべきです。リアルとデジタルの両方に強みを持つJCDでは、どのようにしてリアルとデジタルを融合させるか、予算配分はどうすればいいかといったご相談にも乗ることができます。
また、グローバルに進出する企業の支援も得意としています。欧米やアジアなどの主要16カ国において、以下の8項目全てを手配できます。
(1) イベント・商談会運営
(2) 旅行博などの展示会出展サポート
(3) デジタル運用広告
(4) OTA・口コミサイトとのタイアップ
(5) 媒体とのデジタルタイアップ(記事広告・特設サイトなど)
(6) インフルエンサー施策
(7) OOHなどの各種広告媒体の手配
(8) ファムトリップ(旅行会社・メディア)
上記の施策を海外で実施する前に、スモールケースとしてインバウンド向けに国内で実施することも可能です。
インバウンド向けプロモーションに関して、「何から始めたらいいのかわからない」、「内容は固まっていないけれど、とりあえず相談してみたい」、「外国人目線を知りたい」、「プロモーション施策の手順を整理したい」などとお考えの方は、ぜひご相談ください。