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片岡まり氏とJCDが語る 企業が取り組むサステナビリティの現在と未来

ゲームチェンジするか、されるか?

2024年9月25日、JCDは『サステナビリティレポート2024』を公開しました。本記事では、サステナビリティ推進コンサルタントとしてJCDに伴走し、代表取締役 藤原、取締役 奥野のインタビューも担当してくださった「一般社団法人 株主と会社と社会の和」理事の片岡まり氏と、JCDのサステナビリティ推進局長・小林が対談。サステナビリティの取り組みを本格化してから今年で3年目になるJCDの現状を軸に、企業が成長するためのサステナビリティのあり方やその先にある未来、取り組みを推進するうえでぶつかりやすい壁とその向き合い方について語り合いました。

  1. JCDのサステナビリティレポートで考える、マテリアリティ強化の2ステップ
  2. 会社をサステナブルにするのは経営の仕事
  3. 「ゲームチェンジャー」になれるか否かが企業の未来を変える
  4. 取り組み推進に求められる「トップの強い意思」と「専門人材」
  5. 評価制度、周年事業...サステナビリティと事業をつなげる取り組み例
  6. コミュニケーションの力で、互いを大切にし合う、よりよい社会に

●プロフィール

片岡まり氏片岡 まり氏
一般社団法人 株主と会社と社会の和 理事
大学卒業後、株式会社資生堂に入社。営業、商品開発、マーケティング、CSR、宣伝、広報など多岐にわたる部門で、一貫して国内外のステークホルダーとのコミュニケーションや、企業メッセージ発信に貢献する。2021年に資生堂を退社し独立。培ったコミュニケーションに関する知見を生かし、一般社団法人 株主と会社と社会の和の理事に就任。サステナビリティ情報開示や統合報告書の企画・制作、トップインタビューや原稿作成などを通じて、企業のサステナビリティ推進を支援する。2025年初めには欧州サステナビリティ情報開示に関する共著を出版予定。

小林 正太郎小林 正太郎
株式会社JTBコミュニケーションデザイン 総合企画部 サステナビリティ推進局 局長
1995年、株式会社JTBに入社。支店、本社勤務を経て、2018年よりJCDへ出向。スポーツビジネス推進や新規営業推進、新規事業の立ち上げなどを担当する。2022年度より総合企画部内に新たに設置されたサステナビリティ推進局の局長に就任。JCD全社におけるサステナビリティ推進に取り組んでいる。

1 JCDのサステナビリティレポートで考える、マテリアリティ強化の2ステップ

―今回が第2回の年次レポートとなりますが、昨年の初回レポートからの変更点や、特に力を入れたポイントについて教えてください。

小林
取り組み方針は昨年度から大きく変わっていませんので、レポートの方針も基本的には前回を踏襲しています。ただし、より詳細な環境データを掲載したり、GRI(※)のスタンダードを参考に、より信頼性を高める内容になるよう意識しました。中でもガバナンスやリスクマネジメントについては、片岡さんからアドバイスを受け、しっかり記載すべきと考えました。具体的には、浸透に向けた社員研修や内部通報制度・通報件数等について詳細に記載しました。
※GRI(Global Reporting Initiative)は25年以上にわたり、様々な組織が環境・社会・経済への影響を評価し社会に報告できるように「共通言語」としての開示基準を設計している、オランダに本部を置く国際的な非営利組織。

片岡氏 
ガバナンスやリスク対応、法令順守についてはしっかり書く必要があると助言させていただきました。そもそもサステナビリティ(持続可能性)は、会社が成長し続けるために取り組むものであり、レポートは「なぜ会社が持続し続けられるのか」を伝えるものです。「社会貢献の本」ではないんですね。その点をきちんと記載するようお伝えしました。

サステナビリティレポート2024
■「サステナビリティレポート2024」

―JCDの課題はどこにあると考えられますか

片岡氏片岡氏
企業と社会のサステナビリティを考えるうえで大切なマテリアリティ(重要課題)の一つひとつにはしっかりと取り組んでおられますが、それらの活動を進めるとなぜ会社と社会の持続につながるのかというストーリーが少し弱いように感じています。しかし、事業活動とマテリアリティの関連についてのストーリーがきちんと書けている企業はごくまれで、どうしても個別の取り組みに重点が置かれがちです。
私は、マテリアリティにはリスク回避を目的とした「規定演技」と、自社の強みを生かした「自由演技」という2つのレベルがあると考えています。今年度、JCDが力を入れたコーポレートガバナンスは「規定演技」にあたるので、今後は「自由演技」にも力を入れていけると良いですね。

マテリアリティは、「会社の強みがどこにあるのか?」を徹底的に追求したものです。JCDの場合、それは「人」と「専門性」にあたります。藤原社長も「領域における専門性と、その領域における多彩なソリューションを持ち、それを組み合わせることでお客様に貢献できる。それが自分たちの強み」とお話しされています。専門性やソリューションは「人」に存在するものです。まさに「人的資本」そのもの。ここについてはもっと深掘りして、ナラティブに表現できることがあるのではないかと思っています。

人的資本を磨くために自分たちがどう努力し、どう社会から評価されているのか。その土台となる風通しの良い企業風土をどのように作ってきたのか。それらが合わさり、「専門性を生かしたより良いソリューション」につながっていく......そんなストーリーを語れると、とてもカッコいいと思います。

小林小林
ぜひそこを目指したいと思います!現時点では「サステナビリティを軸とした事業」の展開においては、まだまだ取り組む余地があるという状況です。また、どんなに優れたサービスを提供していても、会社として何もできていなければ説得力がありません。ですので片岡さんのお話どおり、この3年間はベースとなる規定演技の整備に注力しました。ISO14001(環境マネジメントシステム)や、「えるぼし」等の各種認証の取得、外部の基準を取り入れるためにグローバル・コンパクトをはじめとしたイニシアチブへも加盟しました。また社員の理解浸透や意識醸成に向けたセミナーや研修も数多く実施してきました。次のステップは、事業において社員一人ひとりがサステナビリティを自分ごと化し、強みに変えていくことです。難しい部分ですが、自由演技に磨きをかけ、地に足をつけて実力をつけていきたいと思っています。

片岡氏
「一歩一歩着実に進めよう」という小林さんの姿勢は素晴らしいと常々思っています。サステナビリティに取り組む意味を社員が理解し、業務に落とし込むこと、つまりサステナビリティを「実装」できてこそ、会社の成長を実現できるのです。

2 会社をサステナブルにするのは経営の仕事

片岡氏
担当者が一人でいくら考えても会社はサステナブルにはならない、というのも事実です。なぜならサステナビリティは経営の仕事だからです。自社の強みは何か、それを保ち、さらに磨き続けるためには何をしなければならないか。企業風土や、MICEを切り口にした環境への取り組みを、もっと世の中に浸透する方法で伝えていくにはどうすればいいのか。そういったことを経営者がしっかり考えなければなりません。

―サステナビリティを進めるために有効なのは、トップダウンからの強いメッセージなのか、それともボトムアップか?

片岡氏
6対4でトップダウンが重要だと思います。優れたリーダーシップを持つ経営者がいる企業では、ESGという言葉を特に意識せずとも、自然とサステナビリティの要素を経営に取り入れているように感じています。長期的な企業価値の向上と社会的責任・持続可能性の両立を図ることが経営だからです。自分たちの強みや、それをより磨くには何をすべきかを常に考えておられるのだと思います。ボトムアップには限界があります。サステナビリティを実装する力は、やはりトップでなければ持てません。JCDが行っているサステナビリティ委員会には、もっと上層部に参画してもらうべきでしょう。

小林
いろいろと話を伺っていると、サステナビリティの取り組みが進んでいる企業は、「トップや経営層の思いが強い企業」、そして「必然性に迫られた企業」であるように思います。近い将来どの会社も必然性に迫られるはずです。このことに社員一人ひとりがいち早く気づき、取り組みの必要性を認識するためにも、トップの力強いメッセージは重要だと感じます。必然性という意味では、当社が展開する事業では、イベントの企画運営や、施設の運営など、多くのエネルギーを消費するものもあり、そこでやるべきことは多々あると思っています。環境に負荷がかかるからといって人々のコミュニケーションの機会が少なくなることはないと思いますので、事業活動を続けながらより環境負荷の低減につながる方法を考え続けることが必要です。それは業界全体でサステナブルな社会づくりに取り組むことであり、企業としての成長にもつながるのではないでしょうか。当社が展開する『CO2ゼロMICE®』(※注)をはじめとするグリーン事業はその入り口と捉えています。
※注)CO2ゼロMICE®:MICEを実施する際に、会場で使用される電気を再生可能エネルギーに置き換えることで、CO2を実質ゼロにできるサービス

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3 「ゲームチェンジャー」になれるか否かが企業の未来を変える

―一方で、現場ではまだまだサステナビリティより価格競争が優先されることも多いと聞きます。

小林
現状では、全ての案件で価格より環境を優先できるかというと、まだ難しいと思います。この先そういった社会になるだろうとみんな頭では思いつつも、目先の経済価値が優先される実態はあります。そこに我々がどれだけ早く気づき、本腰を入れられるかどうかが、サステナビリティという側面での成長を左右すると考えています。

片岡氏
それは企業にとって「ゲームチェンジをする側になるか、される側になるか」という大きな分かれ目でもあり、その差は非常に大きいです。JCDはどちらになるのでしょうか? 

選ぶ方針によっては「世の中のスタンダードはこうだ」と伝えていく立場、つまりゲームチェンジする側になれるかもしれません。例えば今、欧米のカンファレンスに行くと、どこも環境配慮型になっています。紙を配らず、会場に入った瞬間からみんなタブレットで資料を見ています。日本もいずれそうなるとわかっているなら、早く取りかかっておくことでゲームチェンジする側になれるでしょう。そうでなければ、ゲームチェンジャーが作ったルールに従って仕方なく、自社のポジションを守る側になってしまうかもしれません。それが悪いわけではありませんが、企業の成長を目指すうえでは、一歩でも先に進んでおく必要があります。

小林
大きな流れを生み出すという点で、「パートナー連携」がJCDにとってカギになると思っています。当社はメーカーのようにモノづくりの技術があるわけではないので、一社でできることは限られています。だからこそ周囲を巻き込むことが重要で、それがないとサステナビリティは成しえません。難しいところですが、逆に競合優位性につながる道でもあると思っています。マテリアリティでも「パートナーシップ」や「コミュニケーション」を重視しているのは、それが社会を良くするだけでなく、当社自身の強みを生かす道だからです。

片岡氏
「事業パートナーあってこそ」というのはJTBグループの根幹をなすビジネスモデルであり、パートナーやステークホルダーを大切にしようとするのは重要な企業文化ですよね。JCDもトップメッセージで「パートナーシップ」「事業パートナー」という言葉を繰り返し話されているのが印象的です。「ステークホルダーの人たちの意見を聞いて、自分たちも事業そのものを高めていく」という考え方は、まさにサステナビリティの根幹です。お客様や取引先、それと一番重要な社員、そうしたステークホルダーの声を取り入れながら、「自社の強みを生かして一歩先へ、二歩先へ」という姿勢で変化の速い時代に対応していくことが大切だと思います。

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4 取り組み推進に求められる「トップの強い意思」と「専門人材」

―今のお話を伺うと、サステナビリティの取り組みが、なかなか思うようにいかないという企業が多いと思いますが、停滞しがちな取り組みを加速させるにはどうしたらよいでしょうか?

片岡氏
先ほどからお伝えしているように、まずはトップの強い意思が必要です。上層部が自社のサステナビリティに関する課題認識を明確にし、それを現場のマネジメント層と共有し自分の言葉で語ることにより、担当者を含めみんなで頑張ろう、という体制をつくれるといいですね。もう一つは、社内の専門人材の育成です。多くの企業で課題と感じるのが、2~3年で担当者が変わってしまうこと。経験が積み上がっていかないので、グローバルにおけるサステナビリティ課題は何か?をしっかり理解している人材が育たないのです。せっかくサステナビリティ担当になっても「どうせ数年で異動するのだから」と受け身な対応しかしない、というケースは珍しくありません。人材を育てる体制づくりも大切です。

小林
たしかにそうした体制がないと、サステナビリティの取り組みが現場レベルに落ちていきませんよね。先ほどお話したように、事業においては価格が優先されることがあります。それは自社の社員も、取引先様やパートナー企業も同様です。ただ、必ず各企業の意識は変わっていくので、その時に我々がどれだけセールス力、説得力、サービスの質などを高めておけるかが重要になってくると感じます。

片岡氏
昨今、事業活動が社会や環境に与える影響を、自社事業だけではなく川上から川下まで全体で追跡・把握することやCO2の排出についても自社からの直接的な排出のみならず、自社活動に伴う間接的な排出を含む、事業活動に関係するすべての温室効果ガスの排出量である「スコープ3」が重視されて来ています。つまり、「自社だけが頑張れば済む」という話ではなくなってきています。JCDのお得意先の企業様もそれぞれの得意先から「御社のCO2排出量を全て集計して報告を」などと求められているはずです。「その作業負荷を少しでも軽減できる」というメリットで話をしていくことがポイントになるのではないでしょうか。

小林
JCDとしても、一つのソリューションだけの提案では通用しないと思っています。また環境だけではなく人権や多様性等も視野に入れたトータル的な提案をしなければなりませんし、そこに説得力がないと響かない。そういった意味でも、やはりトップから担当者一人ひとりまで、 サステナビリティを自分ごと化して進めていくことが必須ですね。

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5 評価制度、周年事業...サステナビリティと事業をつなげる取り組み例

―企業としての成長戦略とサステナビリティが直結していることを、自社の社員から取引先まで一人ひとりが理解する=実装するということですね。それがうまくいっている企業の事例はありますか?

片岡氏
企業によっては経営ビジョンの中にサステナビリティに近い文言が織り込まれていて、「それを達成するために自分たちは仕事をしてるんだ」ということを社員の皆さんがよく理解されています。

それから最近は、役員報酬に「CO2の削減量」「担当部門の社員エンゲージメント率」といった指標を入れる企業が増えて来ています。欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)にも「インセンティブ制度を設けているかどうか」という項目が明記されています。そこまで強制力を持つと行動せざるをえませんよね。

小林
JCDでも評価において「サステナブルな取り組み」を指標の一つに設定しています。組織や個人において取り組み目標を立て、年間を通して実現できたかどうかを評価しています。

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―JCDがお客様に対して組織作りのコンサルティングや研修を行う際の取り組み例はありますか?

小林
当社では「組織開発・人材開発」事業を展開していますが、女性活躍推進や社員のモチベーションアップに向けたコンサルティングを行っています。また「WILL CANVAS」というシステムにより従業員の意識調査を行うサービスを展開していますが、これにサステナビリティに対する意識や行動レベルを診断するサーベイも搭載しています。取得したデータを活用しながら経営戦略とサステナビリティを連動させるというようなケースも増えてくるかもしれません。
また、近年、周年事業においてサステナビリティをテーマの一つに掲げる企業も増えてきたように感じます。「周年を機に、サステナビリティの意識を従業員に伝えたい」という経営者の意思であり、新たに掲げる方針の浸透もあれば、元々ある理念やミッションを見直すというケースもあると思います。

課題把握から組織開発を支援するHR-Techサーベイ
「WILL CANVAS」「サステナビリティレベル診断」リリースのお知らせ

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パソナグループの女性役員を招いての講話の様子

片岡氏
創業時は事業に対するパーパスが強くあるので、サステナビリティに通じる思いが自然と含まれることが多いですよね。周年にあったってのメッセージで「原点に立ち戻って」というのは、社員をはじめとしたステークホルダーの理解を得られやすいでしょう。

6 コミュニケーションの力で、互いを大切にし合う、よりよい社会に

―最後に、今後の抱負をお聞かせください。

小林
当社は"コミュニケーション"を名乗っている会社です。サービスを作るにあたってもコミュニケーションは重要ですし、世の中にもコミュニケーションの課題はまだまだたくさんあると思います。企業、自治体、地域といったパートナーの皆様と連携する中で、価値観を共有し、サービスを生み出していけるか。それが我々のパーパスであり、存在意義ではないかと考えています。

「サステナビリティをやらなくてはいけない」ではなく、パーパスを突き詰めていくと環境や地域、人財の多様性などを大事にすることになる。そんなふうに、お互いを大切にし、リスペクトし合う社会というのは、サステナビリティそのものだと思います。ビジネスなのでもちろん競争はありますが、協調すべきところはして、その上でどう差別化するかが勝負どころになってくるでしょう。それを企業の成長戦略にもつなげ、 "コミュニケーションをデザインする会社"として、よりサステナブルな社会に貢献していきたいと思っています。

片岡氏
それによってJCDはおそらく"ゲームチェンジャー"になれるんですよね。ゲームチェンジャーになるために大切なのは、やはり「人」です。ぜひこれまで以上に人財を磨くことに注力してほしいと思います。

ゲームチェンジをする人には、アイデアと連携力があります。専門性も重要です。「新しいスタンダードの形」を具体的に見せないと、世の中は変わりませんので、周囲に教えられるだけの専門性を持つ必要があります。専門性があってこそアイデアも生まれます。そのアイデアを独り占めするのではなく、連携することで、世の中にたくさんの良いコミュニケーションが生まれていく。JCDはそんなリーダーとして、社会を変えるゲームチェンジャーになっていくはずです。

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